そのむかし、飛行機に乗るのが苦手だった私。
座席についた瞬間に逃げ出す方法を模索、安全のしおりをキャビンアテンダントさんの説明前から、必死に読みました。緊急脱出用パラシュートが戦闘機にはあるのに、何故旅客機にはついていないのか?本気で考えた時もありました。
飛行機に乗らざるを得ない経験が、徐々に飛行機に対する恐怖感を麻痺させてくれました。
ある日、上司と富山に出張。得意先の時間の都合で飛行機での出張でした。
以前ほど飛行機に対する恐怖感もなくなっていました。
しかし、この気持ちのゆとりが、恐怖に変わる。
行きはヨイヨイ!帰りは怖い!
行きは順調なフライト。帰りも順調だったフライトだったが、羽田の上空で様相が一変しました。
機内アナウンス:着陸態勢に入ります。シートベルトをしっかりと、お締めください!
この先、雲の状況で機体が揺れますが、安全な飛行には影響ないので、ご安心ください!
高度を下げながら、明らかに荒れていそうな、ドス黒い雲の中に飛行機は突っ込んで行く。土砂降りの雨を降らせいるであろう黒雲の中、羽田への着陸を決行しなければならない状況だった。
真っ黒な雲に入ると、ガタガタガタガタ! ガターン! ヒュー! 左右上下に激しく揺れる機体! スペースマウンテン+ビッグサンダーマウンテン状態
機内に響き渡る乗客の押し殺したような声「オーッ」「ウヲーッ」
すると突然 大きな爆発音と閃光! パァーーン! ガッターン!
機内の様子:「キャーッ」「ウオッー!」
黄色い声と黄色い世界。本当に一瞬、全てが黄色くなりました。
間髪入れずに、機長から落ち着いた声でアナウンス 「ただいま当機、被雷いたしましたが、安全な飛行には何ら問題ございませんので、ご安心ください!」
被雷?問題なし?安全? ???? ホント?
その後も何度か機体は上下左右に激しく揺れながら、下降、上昇を繰り返し、着陸を試みました。
この状況が続いていた中で、隣の座席の上司が私に話しかけてきました。
かなり肝の据わった方で、何事にも慌てることもなく、堂々としている方でした。
その上司が、押し殺した静かな声で、「いよいよきたか? これで終わりか?」飛行機の激しい揺れは止まらない。
再び押し殺した声で、「いよいよ終わってしまうのか? これで最期か?」
ここで、人の恐怖や不安が自分を冷静にするという、私の得意技が出ました。第三弾!
機長のような落ち着いた声、ゆっくりとした語り口で、
「大丈夫です。飛行機は最も安全な乗り物です。滅多なことでは落ちません!」
暫くしてから、飛行機は思い切り上昇した。
スコーン!という音はしなかったが、そんな音が聞こえるように、飛行機はドス黒い雲を一気に抜けて上昇した。
ドス黒い雲の上は別世界!黒い雲を真っ赤な夕日が照らす、見たことのない光景!
生きていて良かった!と本当に思いました。
機長から再びアナウンス
「当機、一旦大阪伊丹空港を目指します。羽田空港上空の天候回復を待って、伊丹より羽田を改めて目指し、飛行することになります。」
なにー! これから大阪行って様子を見るってか! 帰り何時だ? 電車あるかな?
心配ご無用!何とかなるさ! 見事なこの光景を楽しまなくては。
富山⇒羽田⇒伊丹空港⇒羽田のCAさんの落ち着きとリラックスした笑顔のサービス。
機長の冷静で、いかにも頼りになりそうな、落ち着いたアナウンスと操縦。
この体験は飛行機に対する私の認識を大きく変えることになったと思います。
そうです。飛行機は安全な乗り物で、その事故率は毎日乗っている自動車とは、比べものになりません。
飛行機に乗って墜落する確率は900万分の1だそうです。10年前のデータですが、全世界の年間搭乗客数29億人で不幸にも航空機事故で亡くなった方は372人だそうです。
因みに国内自動車免許保有者の1年間に事故を起こす確率は約1000分の9。国内1年間の事故件数は2022年で約30.5万件、負傷者約36万人、死亡者2636人だそうです。
自動車に乗るときには、もっと緊張感をもって乗らないといけないと、改めて、自分に言い聞かせる今日この頃です。
ところで、人が不安になったり、怖がったりすると妙に冷静になるこの現象は、一体何という現象なのか、安直な調べ方で、今もって全くわからない状況です。
長々とした話、お読みいただき、ありがとうございます。
今日は、これで失礼いたします。
2月16日
※この写真は文章とは関係ありません。
当日の飛行機からの光景は残念ながら、写真に残す余裕がありませんでした。