高校生に戻ったら、数学のM先生の最後の講義(お話)を聞きたいと思っています。
M先生の苗字は私と同じMで、私は勝手に親近感を持っていました。
正確な年齢は聞いたことはありませんが、おそらく50代後半ではなかったかと思います。当時のクラスメイトに聞いても、正確な年齢はわかりません。
M先生は、私たちが入学した時点で、既に病気を抱えていたようです。
病気を抱えながら、教壇に立っていましたが、日によっては、かなり体調が悪そうな日もありました。講義も休むこともありました。
そんなある日、M先生は「今日は申し訳ないけど、数学の授業ではなくて、僕がどうしても自分の中で整理がついていないことがあり、その話を聞いて欲しい。」というのです。
M先生が教員になって間もない頃の話でした。
先生の生徒A君が卒業して、たしか伊豆七島の大島出身者だったと聞いたような?
M先生が休みを利用して、大島に一人で旅行した時に、島を散策中に、道に迷ってしまい旅館に帰れなくなった時の話です。
暗くなり、完全に迷って困っていると、その道の行先のほうから誰か歩いてきました。
嘗ての教え子の元生徒A君が歩いてきたというのです。
道に迷った事情を話したところ、A君はM先生を旅館まで案内し、その後別れたということでした。A君の実家にはご挨拶できずに、東京に戻ったところ、直ぐにA君の実家から
A君が亡くなったことを知らせるハガキが届いたそうです。
しかし、不思議なのは、A君が亡くなった日付は、M先生が道に迷って、A君の案内で旅館まで帰れた、あの日の数日前だったというのです。
こんな不思議な講義をして、暫くしてM先生は入院されました。
M先生のこの不思議なお話が、最後の講義だったと記憶しています。
M先生の話について細かい部分が思い出せない私は、時々会食をする元クラスメイトに、M先生のこの不思議な話の詳細を覚えていないか何度か聞いたのですが、残念ながら、全員全く覚えていないと言うのです。
なぜ、こんな印象的で、不思議な話を覚えていないのか?
聞いていなかったのか?授業中寝ていたのか?
もしかしたら、彼らはM先生のこのお話の時に教室にいなかったのかもしれません。
午後の授業になると、他のクラスメイトに代弁を頼んで、どこかに行ってしまう連中だったからです。
いずれにしても、この不思議なM先生の最後の講義(お話)を、聞き逃しているところはないのか?自分の記憶は正しかったのか?などを含めて、もう一度よく聞きたいと思っています。
勿論、それは無理な話なのですが、M先生同様、私もこの不思議な最後の講義(お話)の内容は、未だに自分の中で、消化しきれていません。
本日は、これで失礼いたします。
4月8日
※50年以上前、通っていた高校の現在です。