先日、日系二世のFK氏が亡くなったとの連絡がありました。
95歳の大往生だったとの事です。
私が初めてロスアンジェルスに行った時以来、ロスに行くたびに、いつもお世話になっていた恩人です。
太平洋戦争勃発時は、日系人収容所に送られて、苦難の時もあったようです。
数々の修羅場を生き抜いてきたからでしょうか、いつも笑顔、温和、誰に対しても優しく接する素晴らしい方でした。
オレンジカウンティにある、FK氏の自宅を1976年に初めて訪れた時、まず驚いたのが、家の広さもさることながら、道路からアプローチまでの広さと解放感、母屋から少し離れたガレージの大きさでした。
ガレージの中を見て、さらに驚かされたのは、自家用車が3台、キャンピングカー1台、バイク1台、そしてモーターボートが一台。
車はご主人用、奥様用、お子様たち兼用の3台、FK氏、お子様たち兼用のバイク1台。
キャンピングカーとモーターボートは勿論、レジャー用でした。
FK氏曰く、自分達の生活環境が、大体今のアメリカの平均的な生活環境だと思うとの事でした。
恐らく、控えめに言っていたのだと思いますが、どう見ても私には平均的と言われても、信じがたいスケールでした。
ロスというより、アメリカでも有数の有名企業の管理職を勤められていた方ですが、自分の想像では考えられない生活環境を見せられて、驚くばかりでした。
その後、ガレージのモーターボートをでっかい自家用車にくっつけてレドンドビーチまでドライブ。レドンドビーチではピアからモーターボートで、海の散歩を一緒に楽しませてもらいました。
FK氏のリタイアー後、何度かご自宅に伺いましたが、印象的だったのが、美味しそうにウィスキーオンザロックを飲みながら、ガレージの作業台で、作業器具を操って、趣味のゴルフクラブを自らメンテナンスしながら、余生を楽しんでいる姿でした。
リタイアー仲間と、日本の感覚だとタダ同然のシニア価格で週2回のペースで楽しんでいると、いつも楽しそうに話してくれました。
当時、数十年後の自分のリタイアー後の生活を想像しても、そんな羨ましい生活は全く浮かんできませんでしたが、せめて好きなゴルフくらいはFK氏同様に、楽しめるように頑張ろうと強く思いました。
自身のリタイアーが近づいてきた時に、FK氏と同じように優雅に過ごす事は難しいにしても、せめて自分もFK氏のようにマイペースで、自然体で、自身のリタイアーを楽しむんだという事を意識しながら、リタイアー後の生活を楽しむ自分を想像する、そんな目標というか、そうありたい姿の元々のきっかけをくれたのがFK氏の存在そのものでした。
FK氏の、その時その時を楽しむ姿は、今の自分にも大きな影響を与えてくれています。
最後にお会いしたのは10年以上も前。
その息子さん夫婦(我々と同じ世代)が昨年秋に日本に来た時には、FK氏は相変わらずマイペースで、誰にでもにこやかな笑顔で接していると聞き、実際にごく最近の写真を見せていただいても、流石に歳は取りましたが、温和、穏やかそうな笑顔が印象的でした。
また、おひとり、私に大切なこと、おおきな影響を与えてくれた方が、旅立って行きました。寂しい限りですが、残された自分の人生を、改めてマイペースで楽しみたいと思う次第です。
1月12日
※2010年ロスアンゼルス郊外の風景。